日本酒の分類
 一口に日本酒の分類といっても、原材料や造り方の違いによって種類が分けられています。
原材料の種類と、その量による場合、次のように分類されます。
1) 米と米麹、水だけで造られた「純米酒」
2) 純米酒に一定量(仕込総米の重量の10%以下)までの醸造アルコール(サトウキビかすやタロイモなどを発酵蒸留させたエチルアルコール)を加えて造った「本醸造酒」
3) 増量の為に、醸造アルコールを加えて造った(アル添酒)「普通酒」
4) さらに醸造用糖類、酸味料、アルコールなどを混合した調味液を加えて造った「糖類添加普通酒」
 また、特定名称酒とそれ以外という分け方もあり、前述の1)2)は特定名称酒に含まれ、3)4)はそれ以外の酒という事になります。
 特定名称酒は、後述するように、精米歩合や醸造アルコールの添加量が制限されています。特定名称酒以外の酒は、特に精米歩合についての制限はありませんが、通常、飯米や加工米を使用し、精米歩合は70〜85%である場合が多いようです。最近流行の「米だけの酒」もここに分類されます。
 昔は全ての日本酒が純米酒造りが基本でしたが、時代背景の中アルコールを始めとする添加物が認められました。アルコールの添加は、使用目的によって賛否はありますが、増量を目的にした添加が、今でも認められているのは残念な事です。
特定名称酒
 特定名称酒と呼ばれる酒には以下の酒があります。
「純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」「本醸造酒」「吟醸酒」「大吟醸酒」
 純米酒と本醸造酒は、精米歩合が70%以下(お米の30%以上を削る)と定められており、それが60%以下になると「特別」という冠を付けられ、それぞれ「特別純米酒」「特別本醸造酒」と呼ぶ事ができます。
 さらに60%以下に精米した上、低温でじっくりと醸したお酒を「吟醸酒」といい、50%以下まで精米した吟醸酒を「大吟醸酒」といいます。
 つまり、吟醸酒や大吟醸酒のうち、醸造アルコールの添加されていないお酒を「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」というわけです。これらの特定名称酒は、普通酒造好適米と呼ばれる、清酒製造に適した米を使用する場合がおおいのですが、製造コストを下げる為、あるいはその地域色を出す為に、好適米以外の米を使用する場合もあります。又、吟醸に関する分類について、精米歩合50%以下を「吟醸酒」「純米吟醸酒」、精米歩合40%以下を「大吟醸酒」「純米大吟醸酒」と、厳しく自主分類する蔵も多く見られます。
 お酒の値段も、原料と造り方によって、大きく異なる事が、以上からでもお分かりいただけたかと思います。
上の図は純米酒で白米の使用量を100%とした場合に、日本酒のタイプによる添加アルコール量の違いを表しています。
白米1トンから造られる純米原酒は約、2000g弱
精米歩合のこともかみすれば普通酒と特定名称酒ではその製造コストに、かなり差が出る事がわかります。
 それではそれぞれについてもう少し詳しくご説明したいと思います。
吟醸酒  原料米の表面の脂肪やタンパク質など、いわゆるお酒の雑味の原因となるものを削り落とし、精米歩合の60%以下の、芯の澱粉だけにして低温でじっくり醸したお酒。
「吟醸酒」のうち、醸造アルコールを添加しないものが「純米吟醸酒」です。精米歩合50%以下になると「大吟醸酒」「純米大吟醸酒」と表示できます。
純米酒  文字どうり、純粋にお米だけで造られているお酒で、醸造アルコールなどは一切添加されていないお酒です。精米歩合も70%以下と定められています。
 精米歩合60%以下又は、酒造好適米の使用割合が50%以上の場合、「特別純米酒」の表示が出来ます。
本醸造酒  純米酒に一定量(白米重量の10%以下)の醸造アルコールを加えたお酒。純米酒同様に精米歩合も70%以下と定められています。
 精米歩合60%以下又は、酒造好適米の使用割合が50%以上の場合、「特別本醸造」の表示ができます。
普通酒  特定名称酒以外のお酒を総称して普通酒と呼んで区別しています。精米歩合の規制はなく、醸造アルコールの添加量も上限はありますが、本醸造より多い量が添加できます。アルコール添加で薄まった味を調える為に糖類、酸味料、調味料なども添加しているのもあります。中でも「三増酒」といわれるものは、文字通りお酒の量が純米酒の3倍にもなります。
 必ずお酒のラベルには原材料名が記載されておりますので、これを見ればどれにあたるお酒か大体判断できますが、普通酒や三増酒の表示はありません。
その他の表示について
原酒  もろみを搾った後に、水を加えていないお酒。普通日本酒は、瓶詰め時にアルコールの度数を調節する為に水を加えていますが、それを行っておません。その為アルコール度数は高く、味わいも濃厚です。
生酒  一般的なお酒は貯蔵前と瓶詰め時にニ度火入れ(酵素の働きを止めたり殺菌する事が目的)を行いますが、その火入れを一度もしていないお酒を「生酒」といいます。酵母や酵素が生きている為、低温での管理が必要です。本生生々という事もある。
生詰め酒  生酒とは違い、貯蔵前の一度目の火入れは行うが、瓶詰め時に火入れをしていないお酒。後生ともいいます。
生貯蔵酒  生詰め酒とは反対に、生のまま貯蔵し、一般的に瓶詰め時に火入れしたお酒です。先生(さきなま)ともいうかも。
古酒
長期熟成酒
 日本酒を長期間貯蔵熟成させたお酒。長期熟成させる事により、独特の味わいや香りを持っています。5年以上熟成させた「秘蔵酒」と呼ばれるものもあります。
 なお、蔵では酒造年度(毎年7月から翌年6月まで)が変わると、前年のお酒は全て古酒と呼んでいますし、過去は前々酒造年度のお酒を古々酒、3年たったお酒を秘蔵酒と呼んでいましたが、ここでいう古酒・秘蔵酒とは異なります。
にごり酒  もろみを粗濾ししたり、搾った後の滓が残っているお酒。白くにごっていたり、沈殿していたりしています。
米だけの酒  純米酒と表示するには、「精米歩合70%以下の白米、米麹及び水を原料として製造した清酒で香味及び色沢が良好なもの」となっております。つまり米・米麹及び水を原料としていても前期の条件に従わなければ純米酒とは表示できないので、これらの酒を「米だけの酒」と表示することがあります。
 ではどのようなお酒かというと
 精米技術の進歩・原料米の性質を考えた上で、あえて削らない(70%以上)白米を一部あるいは、全量使用して造った、アルコールを添加していないお酒をこのように呼んでいる場合があります。
 原料面では、純米酒でまた純米のお酒を仕込む「貴醸酒」の場合、仕込みに使われる純米酒が副原料とみなされ純米酒と表示できません。
 また、法律上の白米とは農産物検査法により3等米以上に格付けされた玄米と定義されていますので、それ以外の米を使用した場合には、無添加でも純米酒とは表示できません。